日本原燃 株式会社 再処理事業部 エンジニアリングセンター 技術開発研究所
千葉 有 様


 全国の原子力発電所から出る使用済み核燃料を再処理しウランとプルトニウム、高レベル放射性廃棄物に分離する業務です。当方所属の部署では、再処理工場特有機器の検証試験、高放射線下で使用出来る治工具類の開発、高腐食環境下でも腐食し難い金属材料の開発、そして再処理工場で発生した各種不具合事象に対する熱流動解析を実施しております。
貴業務における流体解析(CFD)の取組み課題は?
簡単に貴社の業務内容をお教え下さい。
(課題は山のように沢山ありますが、その中の一つとして・・  
再処理工場では主に酸を用いる為、機器の腐食について常に考慮する必要があります。酸温度が上昇するとそれだけ腐食速度が加速しますので、機器内部流体の温度を知る事は重要です。そこで流体解析を用いて機器内部流体の温度を把握する事が重要な課題となっています。
「PHOENICS」を知った経緯(または、きっかけ)は?
 元々当方は機械屋&計装・制御屋でした。PHOENICSについては出向にこられていた方が、とある容器の内部流体解析を実施したいという事で導入した模様です。その後その方が出向解除となった際に、折角導入したのに無くするのも勿体無いという事で後任者に任命されたのが素人の当方でした。そこで初めて流体解析という分野と、PHOENICSというソフトを知りました。
「PHOENICS」を選定された一番の決め手は何ですか?
 当方が選定した訳ではないので・・(苦笑)
元々選定した方の話によると、当時流体解析といえばPHOENICSだったそうです。大学でも採用実績がある、計算が比較的容易に出来るという事でPHOENICSにした、という話を聞いていました。
実際にご使用されていかがですか? 
 PHOENICSを知った経緯でも述べましたが、当方は流体解析という分野は全くの素人でした。 学生時代でも流体に関しては殆ど勉強していませんでした。その素人でも流体解析を実施出来るというのは機能的に優れているという証かと思います。 特にユーザーインターフェースが分かりやすいという印象があります。解析モデル作成もオブジェクトを領域に設置する、INLET、OUTLETを領域に置く、簡単なものはこれだけで流体解析出来、直感的に操作出来ます。これから流体解析を学びたいというユーザーには操作しやすいかと思います。 実際、当方の部署でも流体解析を学ぶ場合は、PHOENICSを先ず体験する!というのが第1歩です。 流体解析の登竜門的なポジションです。

その後流体解析が業務として完全に定着する頃になると、依頼業務が多岐に渡り各社解析ソフトが必要となりました。主な導入ソフトとしてはCDAJ様(現IDAJ様)よりSTAR-CD、STAR-CCM+、IconCFD、ANSYS様のFLUENTが挙げられます。またOpenFOAMも導入しています。もちろんPHOENICSが駄目という訳ではありません。PHOENICSも現役で使用しています。

STAR-CCM+やFLUENT等を実際に使用して初めて気が付きましたが、いかにPHOENICSのメッシャーが簡単であるかを実感出来ました。もちろん突き詰めればメッシュ作成に時間がかかるというのは代わりありませんが。メッシャーで挫折する方が結構いますので、この簡単さは良いかと思います。 結果処理がすぐに出来るのも良いと思います。他社ソフトの場合は、予め表示箇所の断面を作成したり、点を指定します。PHOENICSの場合は、特にこれら操作をせずとも、とりあえず結果を即座に表示出来ます。これは急いで結果を知りたい場合等はありがたいです。カスタマイズも簡単で良いと思います。In-Formに記述さえすればソルバーに取り込んでくれるのは良いです。コンパイラーが不要というのもコスト面で優れていると思います。 初心者でも簡単操作で解析が出来、玄人でも使いこなせば相応の結果を期待出来る。誰でにでも使えることが出来、万人向けなソフトであると思います。
今後の「PHOENICS」に期待することは?
 現状のスタンス、特にユーザーインターフェースを維持して頂きたいと思います。STAR-CCM+やFLUENTも素晴らしいソフトですが、とにかく初心者には難しい。多機能過ぎて挫折する人が結構います。対してPHOENICSなら自身を持って出来る!というパターンが結構あります。いかにして簡単操作で流体解析が出来るかが重要であると思うところです。