津波(fig 1)は、主に地震によって引き起こされるもので、UKには然程脅威ではないと考えられていた。しかし、より最近の研究(ref 1)により、大きいスケールの海中への地滑りが津波を引きおこす可能性をあるかもしれず、実際8200年前シェットランドではこれにより20mの津波を発生させていたことが分かった。リスクは低いかもしれないが、原子力や他の必須のサービス設備は、10000年に1回起こるかもしれない災害からも保護されるようにしなければならない。
さらに、海中への地すべりは、気候変化によって温度が上昇していることから、北海に大量の氷と沈泥の突発的な放出などを引き起こす可能性があるであろう。
これらの現象によって引き起こされた波の初期の構造を予測できることが重要である。
この『ローカルな』情報は、ある時の外海の外で起こった災害を伝達するモデルの中に組み込むことができる。初期の波の構造を表すために、PHOENICS Scalar equation method(SEM)を使用した。SEMの使用例や実験との比較はRef2に見ることができる。
ここでは、波の発生を予測するために使用される例として2ケース紹介する。
一番目は、ある速度で固体が海中に突入した場合、二番目は、暖められた氷塊の斜面の崩壊によるもの(流体として取り扱う)。
これらは海へのデブリ崩壊の両極端な現象を表していると考えられる。
PHOENICSモデリング
1番目のケースは、3次元直交座標系でX方向100m、Y方向150m、Z方向30mの解析領域をもつ。X方向は水平、Y方向は波の移動方向、Z方向は高さである。この解析領域は50*150*60のセルに等分割されている。また時間幅はクーラン条件が1よりも小さな値に設定した。
初期条件は、10mの深さまで海水(密度998.2kg/m3)が満たされており、それ以上は空気(密度1.2kg/m3)である。
一定圧力境界を解析領域上面に設けた。それ以外の境界は5面とも摩擦なしの壁とした。側面を固体にしたのは、計算の収束性を上げるためである。PHOENICS MOFOR機能を使用して、水平距離60m、直径10m(陸地の崩壊を模擬)の円柱固体をYZ方向に決められた速度で突入(fig 2)させる。すなわちデブリが海底に至るまで湾曲した軌道を通ることを速度ベクトルで表現している。
6.7秒後(固体が海底に到達する時刻)の結果をfig. 3に示す。高さ4mの波は、シリンダの前の形成されたものが伝播したものであり、より小さいくぼみ(2.5mの振幅)は、後ろに陸地方向に進む。
2番目のケースは、同じ解析領域とメッシュ分割を行っている。
15m×20mの氷塊デブリの断崖は、暖められて不安定になり液体として(密度は海水)海へ崩落することを模擬している。崖の崩落による水面から上昇した高さは、3秒後と6秒後についてfig5に示す。8mと5.5mの高さの波が前縁に現れる。
物質の海への投入と水の高さとの間に関連性をより詳細に満つために、二番目のケースの2D版でY方向に300mに拡張したものを実施した。このモデルは、水平方向により広範囲な状況に関して経済的で適切である。ただし側面からの影響が比較的小さい場合に有効である。断崖における単位水平方向長さあたり落下デブリの変化量について7つのケースを実施した。水面より15mの高さで20mの厚みをもつデブリが水面に投入された時の、18.1732s後の瞬時の水面形状をfig.6に示す。
それぞれのケースの20s後の水面高さの最大値を初期状態の単位水平長さ当たりのポテンシャル[MJ/m]毎にプロットした。この結果がfig.7である。投入されるデブリのもつポテンシャルエネルギと波の高さとの関係がリーズナブルにあらわされている。これは単純な予測ではあるが、いままで波の崩壊が考慮されたシミュレーションが存在していなかったことに対して一定の効果を示している。
まとめ
PHOENICSのSEM (同時にMOFORを使用)して、デブリが海中に崩落した場合の発生する波の形状をシミュレーションした。これらの方法は、波の影響が海のどれぐらい遠くまで届くよう伝播しているかを求めるモデルに対する入力条件として、初期の波構造を決定するために、興味深い具体的なケースに適応されるかもしれない。
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