◎液状食品の加熱滅菌における流体解析の活用-缶詰食品、レトルト食品の熱流体解析の応用
概要
缶詰やレトルトパック内の液体食品の加熱滅菌処理について、流体解析(CFD)を用いて分析を行いました。
流体解析(CFD)には有限体積法(FVM)に 基づく、3次元熱流体解析コード『PHOENICS』を使用しました。
熱流体シミュレーションの結果は、温度履歴、速度分布、およびフローパターン、バクテリア等の細菌濃度を表示しています。 また、最もゆっくりとした加熱時の温度履歴やフローパターン等から時間を通じて滅菌経過を分析しました。
1.垂直型缶詰内食品の加熱滅菌熱流体シミュレーション
四方から121℃の蒸気で加熱された、直立型缶詰内の液体食品の滅菌について調べました。
モデル液体として”ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)”(*)の溶液を使用しました。
(*):食品科学の分野では、例えばアイスクリームなどで増粘剤
および乳化安定剤として使用されている。
<シミュレーション概要>
・座標系:円筒座標系
・計算式:偏微分方程式(円筒座標ナビエ・ストークス方程式)
・計算時間:自然対流加熱、2,574秒間(約43分間)
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◎解析結果
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(図1) |
結果図は、缶の外面に沿って凝縮する蒸気によって、加熱された缶内の”CMC”の温度分布、速度ベクトル、およびフローパターンを表示しています。
図1(a)は、缶内のCMCの自然対流の状態(常温状態)を表示しています。 図1(b)と(c)はどちらも(缶表面から中心への)温度変化による循環対流を表示しています。
これによって缶の底で、二次流れも観察されており、缶内の熱伝達の影響がわかります。
2.バクテリア不活性化(滅菌)シミュレーション
ここでの目的は、熱殺菌中の細菌の不活性化に対する自然対流加熱による滅菌効果について定量的理解を得ることでした。 また、このシミュレーションでは缶詰食品の滅菌処理中の細菌濃度とその一時的な空間分布の変化を計算するための計算手順も同時に開発されました。 計算モデルのパラメーターは、1.のシミュレーションで使用したものと同じです。
◎解析結果
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(図2) |
結果図は、”CMC”で満たされた同じ金属缶のシミュレーション結果を表示しています。 (a)→(C)において、121℃の蒸気で四方から加熱されていきます。
図2(a)は加熱の初期段階(常温状態)では、バクテリアは缶の表面に近い場所でのみ不活性化し、自然対流によって引き起こされる流れの影響を受けていないことがわかります。
図2(b)と(c)は、それぞれ1,157秒と2,574秒の時間経過後の細菌濃度のシミュレーション結果を表示しています。
3.レトルト食品の加熱滅菌熱流体シミュレーション
この事例は、一過性の温度、細菌の不活性化、ビタミンの破壊、およびSHZの形状が、均一に加熱された3次元のレトルトパックについてシミュレーションした。
シミュレーション計算は、幅120 mm、高さ35 mm、長さ220 mmの3-Dレトルトパックに対して実行されました。
シミュレーションでの3Dレトルトパックは、6,000セルに分割しました。
<レトルトパックの形状とグリッドメッシュ> |
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◎解析結果
図1は、加熱3,000秒(50分)後の「ニンジン・オレンジスープ」が入ったレトルトパック内の様々な位置の温度分布を示しています。
図2は、蒸気によって加熱された、「ニンジン・オレンジスープ」を充填したレトルトパックの3,000秒後(50分後)の”50%部分(中心部分)における”ビタミン(C、B1)”の濃度分布(左図)を表示しています。 2つの滞留部分での高いビタミン濃度(HVCZ)の位置を表示しています。 これは同じ軸とタイムステップで計算された”速度ベクトル”(右図)によっても同様の結果が表示されています。
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(図2) |
図3は、蒸気によって加熱された、「ニンジン・オレンジスープ」を充填したレトルトパック内における”ボツリヌス菌”の1,000秒(約17分)後の濃度分布(左図)と速度分布(右図)を表示しています。
最も高い細菌濃度が2箇所で発生していることが分かります。 これらの場所は、最も遅い対流速度と最も低い温度部分に集中しています。
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(図3) |
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